ちかりん、年は十八、色白く膚柔らかく、歌・踊り、巧みにて、飽かぬことなき有様なりけれど、ただひとつ、食ふ事をいみじく好みたりけり。
ライブなき日続けば、休み明けの変貌、見る者の心胆を寒からしむ。
あるフェスにてちかりん、後列の者だにミニスカートの脚の太きを見る。まして最前列は「地響き聞こえたる」と言ふばかりなり。
ある男、通りすがり「さればよ、ちかりん推しことごとく他界せむ」とて、横の者に言ふやう「いかに、ちかりんの太りやう、既にアイドルならじ。そこにも今は他界せむ」と。((二の2)に続く)
(訳)
ちかりんは、年齢は十八歳、色白で肌は柔らかく、歌も踊りも上手く、何不足ない様子だったが、ただひとつ(欠点と言えば)食べることを非常に好んでいた。
ライブのない日が続くと、休み明けの(体形の)変貌ぶりは、見る者をぞっとさせる。
或るフェスでのちかりんは(あまりにも太っていて)後列の者さえミニスカートの足の太いのを見た。まして最前列の者は「地響きが聞こえた」と言って、譲らない。
ある男、通りすがり、「さればよ、ちかりん推しことごとく他界せむ」とて、
横の者に言ふやう「いかに、ちかりんの太りやう、既にアイドルならじ。
そこにも今は他界せむ」と。((二の2)に続く)
(語句・文法)
心胆寒からしむ:
寒から(形容詞「寒し」未然形)しむ(使役の助動詞)
心を寒くさせる・肝を冷えさせる・ぞっとさせる
さればよやっぱり
アイドルならじ
アイドル(名詞)なら(断定の助動詞「なり」未然形)じ(打消推量の助動詞)
そこにも「そこ」二人称。あなた、お前。